ご自分の事業を大きく拡大し発展させたい、事業の効率化を図りコストをかけずに売り上げをよくしたい、事業主であればこのように考えることはある意味普通かもしれません。
そしてその希望を実現させるためには、ITツールを活用することは今や必須条件になっているといっても過言ではないでしょう。
しかしこのITツールを利用することはスキルやコストを必要とすることですので、なかなか導入に踏み切れないという難点があります。
そこで日本の中小企業や小規模事業のIT化やデジタル化を促進し、効率よく業務を改善して売り上げを向上させるために国の主導で始められたのがこのIT導入補助金制度です。
今回の記事ではこの補助金制度についてできるだけ詳しい解説をします。
ITツールを導入して新型コロナウイルスの感染リスクを低減化させつつ業務の効率化と収益化を図るための「低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)2021年4月7日以降新設」にも言及します。
1.IT導入補助金(IT補助金)とは何のための補助金なのか?
IT導入補助金とは正確には 「サービス等生産性向上IT導入支援事業補助金」というもので、令和元年以降補正予算で組まれている事業です。
事務局は一般社団法人サービスデザイン推進協議会が担当して運用していますが、独立行政法人中小企業基盤整備機構が経済産業省の監督のもと実施している事業になります。
その目的はとくに中小企業や小規模事業者の方々を対象に、企業のもつ課題を解決するITツールの導入に対する経費を補助することで企業の業務効率化の改善や収益化の促進を図ることにあります。
2.IT導入補助金(IT補助金)の交付対象となる事業者について
対象は中小企業や小規模事業の会社になります。
業種には飲食業・旅館・ホテル業・運輸業・製造業・建設業・卸売業・小売業・サービス業など多種多様です。
ただし事業規模として製造業・建設業・運輸業・情報処理サービス業であれば資本金3億円、常勤従業員が300人、卸売業であれば資本金1億円、常勤従業員が100人、小売業であれば資本金5,000万円、常勤従業員が50人と業種別に事業規模が定められています。
このほかにも医療法人・社会福祉法人・学校法人・商工会・都道府県商工会連合会・中小企業団体・一般あるいは公益財団法人や社団法人・特定非営利活動法人などの組織も交付対象となっています。
また「日本において登録されている個人あるいは法人」であること。
「国内で事業をしていること」も必要な条件です。
さらに事業場内の最低賃金が法令で定められた地域別最低賃金を上回っていることも求められています。
これらの業種に関連するITツールを企業の運営に導入することに対し経費の一部が補助してもらえることになりますが、導入にあたっては情報セキュリティ対策に積極的に取り組む姿勢を宣言することも必須とされています。
3.IT導入補助金(IT補助金)の交付対象〜通常枠と低感染リスク型ビジネス枠について
一般的にITツールというとホームページを思い浮かべる人がいるかもしれません。
以前はホームページ作成だけでも交付されたこともありましたが最近は業務効率化や収益増加を支援するものに絞られる傾向にあります。
交付対象には通常枠(A・B類型)と低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)があります。
補助金の限度額や導入できるツールに違いがあり、このように分類されているのです。
通常枠(A・B類型)は、その交付目的が従来通り業務効率化や収益向上にあります。
低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)は、通常枠(A・B類型)よりも交付金の補助率を引き上げ、かつ優先的に支援するものです。
新型コロナウイルスの感染拡大が世界レベルで継続しているなかで、ポストコロナ時代に合わせたビジネス形態の変換に向けた取り組みや感染リスクの低減させるために「対面式業務」から「非対面式業務」への転換に取り組みにITツールの活用を試みる中小企業や小規模事業者に対する支援になります。
4.IT導入補助金(IT補助金)の交付対象になるITツールとは?
交付対象になるITツールについて簡単にご説明しておきましょう。
かつてはホームページ製作だけでも交付対象となっていたIT導入補助金ですが、現在は業務改善や収益アップに対する仕組みを含む必要があります。
つまりホームページに予約管理ツールを組み込むなど業務改善につながるものであればホームページ制作でも交付対象として認められる可能性があるのです。
なお交付対象となる業務プロセスとして顧客対応や販売支援・決済や資金回収管理・資材調達・供給・在庫・物流の管理・会計や資産管理・人事や給与管理・教育訓練や情報システムなどが指定されており、これらのプロセスの効率化が見込まれるITツールが対象となります。
より具体的な例としていくつかご紹介しましょう。
たとえば顧客管理機能を強化したITツールの導入ではホームページ内で顧客情報を収集し、その情報からリストを自動的に作成できます。
またマーケティング機能を追加すれば「インターネット上での顧客の行動履歴を追跡すること」で顧客の購買傾向や嗜好もデータ化することも可能です。
これにより特定に見込み顧客をターゲットにした商品開発や集客などに活用できるようになります。
顧客対応にはホームページ上にチャット機能やアンケート機能を追加することが含まれます。
従来対面で行っていた顧客対応もこのようなITツールをもたせることで「感染リスクを低減させつつ比較的リアルタイムに顧客のニーズに対応すること」が可能です。
アンケートはマーケティングツールとしての価値がありますので収益化につながるツールといえるでしょう。
さらには医療施設やサービス業のホームページで「24時間対応の予約を受け付けるツールやホームページ上」に商品カゴや決済機能を含む通販機能を追加してECサイトとすることも含まれます。
5.IT導入補助金(IT補助金)の上限額、下限額、補助率
A類型は補助金額が30万円以上150万円未満です。
B類型は補助金額が150万円以上450万円以下と定められています。
いずれも補助率は総額の1/2以内です。
補助金額の違いからも分かるようにB類型はA類型よりも指定の業務プロセスを多く含むことが定められています。
特別枠であるC類型は、補助金額が30万円以上450万円以下となっています。
複数のプロセス間で情報連携されるツールを導入し、複数のプロセスの非対面化や、業務の更なる効率化を行うことを目的とした事業に対する交付が目的です。
これはオンライン対応ができるビジネスツールを意味します。
D類型は補助金額が30万円以上150万円以下です。
主にテレワーク環境の整備に必要なクラウド対応ツールを導入することで複数のプロセスの非対面化を行うことを目的とした事業に対する交付が目的です。
これはテレワーク環境に対応するビジネスツールを意味します。
特別枠はいずれも補助率が2/3以内と定められています。
これらの目的に合うソフトウェア費用や導入関連費用が交付対象になり特別枠ではこれに加えてハードウェアのレンタル費用も対象です。
6.IT導入支援事業者について
ITツールの導入は実は申請者だけで行うことはできません。
実際に補助金の交付を受けITツールを導入するためには申請の前からIT導入支援事業者を選定しておく必要があります。
このIT導入支援事業者がIT導入補助金の申請準備から実際のITツール導入までのプロセスを支援してくれることになります。
つまり「よいIT導入支援事業者を選定すること」が申請書の採択や目的とするITツールの導入、そして本来の目的である効果的な事業効率化や収益化を果たすことにつながるのです。
IT導入支援事業者の選び方のポイントを3つご紹介しておきます。
- IT導入補助金の申請実績があり、かつ申請が採択された実績があること
- 目的とするITツールの製作実績があること
- 申請者であるニーズに迅速かつ適切に対応ができること
このあたりを考慮してIT導入支援事業者を選定するとよいでしょう。
なおIT導入支援事業者は全国各地に多数存在しています。
IT補助金2021年公式ホームページでは、IT導入支援事業者名を公開していますので参考にするとよいでしょう。
7.IT導入補助金(IT補助金)の申請手順
最後にIT導入補助金の申請手順についてご説明します。
2021年度の申請は、2021年4月7日(水)から受付が開始されており、1次受付は5月14日(金)の17時、2次受付は7月中の締め切りが予定されています。
IT導入補助金事業に対する理解を深める
申請にあたっては「IT導入補助金のホームページ」「公募要領」をまずよく確認した上で事業に対する理解を深めます。
その上で事業計画書を含む提出書類の準備を開始します。
計画書の作成においては、IT導入補助金2021年公式ホームページで公表されている「加点項目を含めるよう」に工夫すると採択される可能性が高くなるでしょう。
現時点で公表されている加点項目は次の4つです。
(1)生産性向上特別措置法(平成30年度法律25号)に基づく特例措置に関して、固定資産税の特例率をゼロの措置を講じた自治体に属していること。(先端設備等導入計画の認定は不要)
(2)地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること。
(3)補助金申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること。
(4)導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること 本事業を通して取り組む事業において、在宅勤務制度を導入するためのテレワークの導入を行う事業者であるか。
(出典:https://www.it-hojo.jp/procedure/)
IT導入支援事業者およびITツールの選定
ITツールを導入するためには先述したように経済産業省が指定するIT導入支援事業者を選定する必要があります。
選定できればこの業者が導入に関するサポートだけでなく交付申請の支援も可能になります。
IT導入支援事業者と相談の上、具体的なITツールを選定し事業計画書に盛り込むようにします。
申請アカウント取得・SECURITY ACTIONの宣言
交付申請のためにはgBizIDプライムアカウントの取得が必要です。
このアカウントは申請から交付まで2週間ほど必要となりますので早めに申請をしておきます。
またアカウント取得とわせて独立行政法人情報処理推進機構が提供する「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。
これは申請者が情報セキュリティ対策に積極的に取り組むことを明言することです。
(出典:https://www.ipa.go.jp/security/security-action/)
IT導入支援事業者およびITツールの選定
ITツールを導入するためには先述したように経済産業省が指定するIT導入支援事業者を選定する必要があります。
申請アカウント取得・SECURITY ACTIONの宣言
交付申請のためにはgBizIDプライムアカウントの取得が必要です。
このアカウントは申請から交付まで2週間ほど必要となりますので早めに申請をしておきます。
またアカウント取得とわせて独立行政法人情報処理推進機構が提供する「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。
これは申請者が情報セキュリティ対策に積極的に取り組むことを明言することです。
(出典:https://www.ipa.go.jp/security/security-action/)
交付申請
IT導入支援事業者と協力の上完成させた事業計画書を提出します。
提出時にはIT導入支援事業者から申請マイページの招待を受け申請者の基本情報も記入しましょう。
以上が申請のプロセスになります。
個人ではなかなか対応が難しいので、実績のあるIT導入支援事業者と相談しながら早めに申請のプロセスを開始することが重要です。
なお交付を受けられればITツールの発注・契約・支払いが可能です。
また事業が完了すれば事業実績報告書や事業実施効果報告の提出も必要となります。
8.まとめ
IT導入補助金の制度について・制度を用いたホームページ作成についてご説明しました。
補助金の申請方法などについては少し煩雑な手続きもありますがしっかりと理解すればご自身で行うことも可能です。
またもしどうしても自分で申請することが難しい場合は、代行している業者等もありますので利用を検討してみるとよいでしょう。
とくに低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、ダメージを受けている中小企業や小規模事業者を救済するための措置ともいえます。
ぜひこの機会に本制度を活用し、新型コロナウイルスによる厳しい状況を耐え抜くだけでなく、ポストコロナ時代の発展の布石とされることをおすすめします。