DXとはどのようなものかご存知でしょうか。なんとなく知っているけれど、よくわからないという方も多いかもしれません。
今回はDXとはなにか、企業にDXを取り入れるメリットやデメリット、なぜDXをすべきかについて事例を交えながら詳しく解説していきましょう。
1.DXって何のこと?
近年「DX」という言葉をよく耳にするようになりました。
社会人の間では「DXってなんのことか」と今さら聞けない雰囲気が漂っているかもしれません。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」を指します。
デジタルフォーメーションは英語で、「Digital Transformation」というつづりになるので、頭文字は「DT」です。
しかし英語では「Trans」のことを「X」と表記します。そのため「DX」と略されているのです。
日本語に訳してわかりやすくいえば、デジタル化による変革に取り組むことを意味します。
DXは、2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が、論文のなかで「IT技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でよい方向に変化させる」と提唱したのがはじまりです。
その後日本では2008年に、経済産業省によって定義が発表されました。
現在日本は高齢化社会に突入し、国内マーケットの縮小や労働力の減少に対する課題が山積みの状況です。
この現状の課題を解決するためにDXは欠かせないもので、国全体として推進すべきプロジェクトのひとつとなっています。
企業にDXを取り入れるメリットとは?
DX(デジタルフォーメーション)を取り入れないといけないのは、大企業であるとは限りません。
企業の業界や株式会社であるかなどの形態・規模を問わず、どういった会社であっても日本が直面している課題を考えるとDXを確立すべきと考えられます。
なぜなら「より多くの顧客をマーケット対象にできる」、「業務効率化を進められる」、「新たなビジネスにつなげられる可能性がある」という3つのメリットがあるからです。
まず「より多くの顧客をマーケット対象にできる」という点についてです。
極端な事例でいえば、小売店ではその店がある周辺に住んでいる人しか顧客になりません。
しかしインターネットに自社サイトを開設して店のアピールポイントを掲載すれば、どうなるでしょう。
アピールポイントはそこにしかない自社商品の特徴や付加価値などです。
一駅先に住んでいる人やさらに遠いところに住んでいる人がサイトをみて興味をもち、わざわざその商品を購入しに訪れるかもしれません。
自社サイトとあわせて通販サイトを開設すれば、日本全国からその商品を購入できるようになります。
顧客を日本全国に住む人々に、展開できるようになるのです。
とくに少子高齢化社会の日本では、子どもや働く世代をターゲットとした商品の市場は狭まっています。
ただでさえ狭まっている市場をいかに開発していくかを考えたとき、DXを取り入れた会社が生き残っていくのは目にみえているのです。
商品だけでなく、サービスの一部もオンライン会議システムを用いれば、新規マーケット層へのアプローチが可能になります。
次に業務効率化を進められるという点についてです。
たとえば、商品がほしいという顧客がいる場合、商品と一緒に作成した請求書を送付し、入金があったことを確認して帳簿につけるという作業を行わなければいけません。
しかしDXを取り入れればクラウドシステムを使用することによって、顧客から注文が入ったと同時に請求書を自動作成できたり、入金と同時に自動で帳簿に反映されるためこれまで行っていた業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
業務は商品発送や帳簿の最終確認だけですむので、人件費のコスト削減あるいは一人の社員がより多くの業務に携わることが可能になるでしょう。
最後に「新たなビジネスにつなげられる可能性がある」という点についてです。
業務が効率化することによってひとりの社員がより多くの業務に携われば、考え方が変わり多角的な視点で身についた全体的な経営戦略を、構築できるようになることもあります。
DXによって顧客のデータ化が進み社内の情報共有が推進されれば、企業が目指していく方向性を明確にする材料が揃います。
事業部門を超えて連携して分析するうちに、会社の強みや強化すべき点が具体的になるでしょう。
ケースによっては、企業の強みを生かして関連のあるほかの会社とコラボレーションして、新たなビジネスを展開することも可能になるでしょう。
コラボレーションする企業を探すのもまたDXを活用することとなり、DXによってどういった企業でも対等につながる世界を実現します。
デジタル技術によって、未来の市場においても新たな付加価値を生み出せるよう変革することが求められています。
企業にDXを取り入れる時のデメリットや注意点とは?
企業にとって新たなマーケットへのアプローチや業務の効率化ができるDXですが、取り入れる際にはデメリットや注意点があることを事前に知っておく必要があります。
DXのデメリットは「多額の初期投資が必要であること」「即効性がないこと」「既存のシステムからの移行に手間が掛かること」の3つです。
まず多額の初期投資が必要になることについてです。
本格的にDXに対応しようとすると、さまざまなシステムを一度に導入することになります。
なかには無料で導入できるものもありますが、多くは有料なのでまとまった金額が必要になるのです。
次に速効性がないことについてとなります。
会社を大きく変革するときには新しく覚えなければいけないことが増えやすく、覚えるまでに時間がかかるものです。
とくに高度な変革となるDXは、結果が出るまでに最低でも1年はかかるでしょう。
DXの導入には多額の初期費用がかかるため、導入前には結果が出るまでの長期的な事業戦略を立てる必要があります。
最後に既存のシステムからの移行に、手間がかかることについてです。
なにもないまっさらな状態からDXをはじめるなら話は簡単ですが、会社には複数のシステムがすでに導入されていることが、ほとんどではないでしょうか。
しかも事業部門によって、ログイン方法に違いのあるシステムを使用していることもよくあります。
せっかくDXするなら、この機会に複雑化した社内のシステムを統一すべきです。
過去のデータを新しいシステムにすべて移行させるには手間はかかりますが、移行できたときにはDXによって格段に便利になったことを感じられることでしょう。
2.なぜDXをすべきなの?
「2025年の壁」という言葉を、聞いたことはありませんか。
2025年は、あと数年でやってくるものです。
2025年の壁という言葉は、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」ではじめて使用されて、注目を集めました。
この資料のなかでは、このまま既存のシステムを使用し続けて日本のDXが発展しなければ、2025年以降に多額の経済損失が生まれる可能性があることを提唱しています。
その経済損失の額は、1年間で最大12兆円です。
現在の経済損失と比較しても約3倍となるこの額は、見過ごせないものでしょう。
DXの導入にもお金はかかります。
しかし既存のシステムを使用し続けていても、膨大なデータを生かせずに企業の競争力を弱め、時代の波に乗れずに経済損失を生じることが明らかになりました。
そのために2018年以降日本でも、積極的にDXに取り組むべきだと考えられているのです。
DXとIT活用はどう違うの?
多くの企業では、既にさまざまなシステムを使用しています。
そのため、「程度の差こそあれども、我が社もDXを取り入れていると言えるのではないか」と考える経営者の方がいるかもしれません。
DXとは、デジタル化による「変革」です。
つまり、業務の一部にシステムを導入しているだけでは変革しているとは言えず、単なるIT活用と見なされます。
IT活用をすると、これまで人間が一つひとつしていた作業を機械が替わって行ったり、さまざまな情報が電子化されて一から作る手間が省けるので、業務の負担が軽減し効率化を進めることができます。
しかし、「2025年の壁」という言葉があるように、単にIT活用しているだけではこれから先に経済損失を生じる可能性の方が大きくなります。
今、求められているのはIT活用の先を行く、もっと抜本的なIT化・デジタル化による変革です。
変革というからには、既存のシステムを社内の人間がより共有しやすくしたり、活用しやすくするために新たなシステムを導入するというだけではありません。
前提条件である既存の事業のあり方から考え直し、企業の競争力を高めていくための対策を考えていく必要があるのです。
さまざまなデジタル技術が開発されているため、目的に合わせて対策を講じるための便利なツールは探せば入手できるでしょう。
困った時に相談できる企業DXの専門家も大勢います。
DXという言葉が一般化してきた今こそ、経営者の意識や企業としてのあり方を見直す時なのではないでしょうか。
DXを実現するために取り入れたいデジタル技術とは?
さまざまな企業のDXを実現するために取り入れたいデジタル技術の代表に「クラウドサービス」「iot」「ai」があります。
それぞれどのような仕組みかをご紹介していきましょう。
まず「クラウドサービス」とは、蓄積していくデータを保管するためにぴったりなテクノロジーです。
データをクラウドサービスに移行すれば、社内でデータをバックアップするためのハードウェアの設置や管理の必要がなくなります。
またリモートワークもしやすくなるため、どういった場所でも情報を共有して迅速にビジネスにつなげる可能性を高められ、社員の多様な働き方を進められるのです。
次に「iot」とは「Internet of Things」の略称で、モノにインターネットを接続してサービスの質を高めていくことを意味します。
出先でもインターネットに接続してテレビやエアコンを操作できる機能つきの人気がある製品を、知っている方も多いのではないでしょうか。
iotはこれまでの認識を変え、一歩先の暮らしを提供するサービスに欠かせません。
そこから得られるデータは、顧客の潜在的なニーズを掘り起こすために貴重なもので、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。
「ai」とは、人工知能のことです。
進化し続けて最新のaiは人間に変わってデータを分析し学習でき、あらゆる場面に用いられています。
aiは人間と違って疲れることはありませんし、感情の波もありません。
そのためどれほど数をこなしても驚異的な正確性があり、医療現場の診断にも役立つといわれています。
飛躍的な業務効率化が期待できるaiは、今後の市場に大きく影響を与えることでしょう。
DXを確実に成功させるためには?
成功すればビジネスチャンスをつかみ優位に立つことをもたらすDXですが、どの部分から実施すればよいのかわからないという経営者の方が多くいるのではないでしょうか。
DXはあくまでも会社の競争力を高める目的の手段のひとつです。
そのためポイントとなるのは、まず経営者が具体的な経営方針や目指すべき売り上げ目標を設定し、そのなかでDXをどのように活用できるかを検討することです。
また経営者ひとりだけが息巻いていても、DXは成功しません。
DXに精通した人材にいつでも相談できる環境を整えるほか、実際にDXを利用する社員に向けたセミナーが欠かせません。
セミナーでは会社が目指す目標を共有したうえで、DXの基本的な知識や取り組み方を説明し、理解を促し浸透させます。
実際にDXに取り組みすぐに結果は出ませんが、組織全体での情報共有や方向性の微調整が必要となります。
慣れない環境や仕事内容に不安を覚える社員がいるかもしれませんが、できるだけ一人ひとりの声に耳を傾け柔軟に判断しながら、DXに対応した会社になっていくのが経営陣たちトップの役目と忘れないようにしましょう。
DXは単なるデジタル化ではなく、製品・サービス・ビジネスモデル・セキュリティ体制・そして社会の変革をさします。
このままだと日本は国際的なデジタル競争時代の敗者となり大きな損失を被ります。改善が必要です。
3.まとめ
DXとはデジタル化による変革のことです。
会社にDXを取り入れれば、より多くの顧客をマーケット対象にでき、業務効率化や新たなビジネスにつなげられる可能性を得られるメリットがあります。
その反面多額の初期投資が必要なものの効果が遅く、既存のシステムからの移行に手間が掛かるというデメリットがあります。
しかし「2025年の壁」という言葉があるように、既存のシステムを使用し続けていては経済損失を生むといわれていて、会社には積極的なDXが求められているのです。
DXに活用したいデジタルテクノロジーには、クラウドサービスやiot、aiなどがあります。
DXを成功させるためには経営者が具体的な目標を設定し、DXをどのように活用できるかを考えることが大切です。
DX導入後も社内での情報共有や、方向性の微調整を徹底することを努めましょう。